真っ暗な皿

3日目の野菜の切れ端を

ただ口を開けて待つひな鳥と

ランプにてらされながら

ただひっそり佇むバク

人のだしが滲んだ鍋と

適当に投げ出されたキッチンペーパー

それ以外の素材はわたし


ふだんなら

気にもとめないパンを

ずっと覚えている


空中宅配のパン

とぎれとぎれのかけら

空がきみのパンをちぎっている

鳩みたいに拾うよ

鳩みたいに食べるよ

真っ暗な皿の上で


涙が横殴りだ

目ばかり狙っている気がする

少しは成長しただろうかと

うぬぼれたわたしの眼鏡を

壊しにやってくる


ひとり ひとりぽっち


涙が横殴りだ

目ばかり狙っている気がする

少しは黙って待つようにする

うぬぼれたわたしの眼鏡を

守るように注意しながら

朝がくるのを待つ

明日の朝になったら、

また ひとりぶんの 夕飯を考える

そして

だれかの残飯になるのだけは

やめようと決めるんだ


あっ


さあ パンが焼けましたよ

この匂いがわかりますか

あなたのために焼きました

あなたのための料理です


なにも ご遠慮なさらずに

その椅子におかけになって


お客様 どうぞ ごゆっくり

死ぬまで食べて帰ってください


©2014 WATANABE Honami.



渡邉帆南美website

詩+絵+額縁の外=かめれおん芸術 を発明。